第39章 8月
めちゃくちゃ頑張って
なんとか予定通り、
21時頃には仕事を終わらせることができて
足取りも軽く会社を出た。
アキくんがこっちまで来てくれるって言ってくれたから、
いつもとは反対の改札へ向かう。
駅は人も多かったから
少し離れたところでアキくんの到着を待った。
金曜日のこの時間
ちょうど2軒目に移動する時間帯でもあるし、人は多かった。
ちなみに最近はそんな余裕は全くなかったけど、
基本的に人間観察が好き。
あそこからあそこまでがグループ。
きっとあれは会社の人たちの集まり。
あの二人は、友達同士。
あの二人は、きっと両方想い。
なーんて
勝手に見て、勝手に想像。
あ、すごい身長差のカップル。
男の人は黒尾さんくらい大きいし、
女の人は、たぶん150cmとか。
身長が高いと、大抵の場所のものは一人で取れる。
電球だって変えれるし、ブレーカーが落ちても問題ない。
よくある、高いところのものが取れなくて
というのに憧れた時期もあった。
だから、今でも背の低い女の人を見ると
ちょっと羨ましかったりする。
私に脚立が必要なときは、たいていの男の人も脚立が必要。
だけど、黒尾さんは違った。
私も背伸びをさせてもらえる。
……………。
あ。
なんか急に会いたくなった。
黒尾さん、今何してるのかな。
まだ仕事中かな。
……………って
音がなくなる。
あんなに煩かったのに。
今は8月
今夜も熱帯夜。
さらに人が多くて
うだるような暑さの中、
背中にツッと
冷たい汗が流れた。
今見たカップル
男の人は、
黒尾さんだ。