第31章 二人の週末
「そんなこと、ないですヨ?」
「ニヤニヤしながら言う言葉じゃありません」
「ニヤニヤなんかしてません?」
めちゃくちゃ口元が緩む。
「………はぁ」
「私といるときにため息つかないでください?」
「お前はなぁ」
黒尾さんのため息が止まらない。
そして、ずっとこそこそ話してたけど、
さっき私が耳元でささやいたように黒尾さんも。
「覚悟、しとけよ?」
そのお返事も、耳元で。
「その、つもりですけど?」
「…………っだーーーーーー!お前は!そうやって!
大人をからかうんじゃありません!」
たぶん私が赤くなったり、恥ずかしがったりすると思ったんだろう。
「からかってませんよ?
黒尾さんが煽ってくるから、お返事しただけですぅ~」
クスクスと笑いながら。
「何?お前俺がいない間なんかあったの?」
「何がですか?」
「なんか言い負けてる気がする………」
「黒尾さんに会いたくて会いたくてしょうがなかったので
やっと会えて嬉しいだけですよ?」
黒尾さんの大きな手が重なっていた手を動かして、指を絡ませる。
「………やっぱ無理。今日は帰るぞ」
「明日ちゃんとデートしてくれます?」
「ウン。明日は出かけような?」
「じゃあ、今日はそれでいいですよ?」
なーんて言ったけど。
私も早く帰って黒尾さんに触れてほしいと思ってます。
とは、電車の中だからまだ言わない。
隣でお茶を飲んでいる黒尾さんが
今度は吹き出しかねませんので。
ね?(笑)