第11章 昨日と明日と明後日と
「どうします、110番の画面のまま寝ますか?」
「し、しませんよ、そんな事・・・」
以前ここに招かれた時も同じことを言われたが。
互いに守る場所は違えど、同業者を盾にするのはどうなのか。
脚が進まない私とは裏腹に、どこか軽く見える彼の足取りを横目に奥の部屋へと進むと、少し予想外の光景が目に入った。
「ああ、ひなたさんはベッドをどうぞ」
彼の言うベッド・・・と、その横に敷布団。
普通、私がそこに寝るべきだろう。
・・・なんて、そういう事ではなく。
「別々ですか・・・?」
てっきり、同じベッドで寝るものだと思った。
だから誘われたのだと。
そんな単純な疑問を素朴に投げかけたつもりだったが。
「・・・あまり、期待させるようなことは言わないでください」
「!」
とんでもないことを聞いたという事実に気が付いたのは、彼にそう言われてから。
これではまるで、私が彼と同じベッドで寝ることを期待していたみたいじゃないか。
「す、すみませ・・・」
・・・いや、違う。
ここで謝罪するのも、していたみたいという曖昧な思いも。
全部、違う。
「き・・・期待、していたかもしれません・・・」
これから彼の傍で、夜を過ごすんだと。
そう考えながらここに来たことに、間違いない。
それ以上のことも考えていない訳ではないが、それはできれば遠慮したい、なんて都合のいい考えをしたことも同じで。
「・・・ひなたさん」
・・・かなり、質が悪い。
彼を都合よく利用している。
罪悪感が私を襲ったが、そんなもの感じる資格なんて私にはないのに。
「これでもかなり我慢しているので、それくらいで勘弁して頂けますか」
我慢させるだけさせて、何も与えられない。
そんな私に、彼はどこに魅力を見出したのだろう。