第11章 決意
地方での撮影を終え
東京に戻ってからも
スケジュールの都合が合う日は
相変わらずチサトはタケルに呼び出された
けれど
マンションからの帰り
車で送ってくれるカヲルを何度部屋に誘っても
まだ仕事が残っているからと言って断られるようになった
タケルの相手だけをする日々が続き
再び精神的に追い込まれていったチサトは
ある夜
駐車場へと降りるエレベーターの中で
カヲルを問い詰めた
『……私の事……どうして避けるんですか…』
「………別に………避けてなんか…」
『…避けてるじゃないですか………東京に帰って来てから…まだ1度も…』
「……」
『………私が………カヲルさんのこと……好きだって言ったから?…………私に想われて…そんなに迷惑でしたか?』
「…違う………君のせいじゃ無いんだ…」
『だったら!………どうして…目も合わせてくれないの?』
「……」
『…………カヲルさん……………私を見て………お願い…』
震える声に
カヲルが顔を上げると
チサトの瞳から
涙が溢れ落ちた
「……」
『……』
惹かれ合うように
2つの唇が重なる
その日
チサトを送ったカヲルは
車を地下駐車場に停めた
そして2人は
肩を寄せ合うようにしてマンションへ入って行った