第1章 クランクイン
駐車場の入り口に立つと
見るからに高級そうな車の中からタケルが手を振っていた
運転席から降りたカヲルが
後部座席のドアを開ける
『…ありがとうございます!……失礼します…』
チサトが乗り込むと
カヲルはドアを閉め運転席へ戻った
静かな車内に低いエンジン音が響いて
車は滑るように動き出した
「…初日で疲れちゃったかな?大丈夫?」
『大丈夫です…お気遣いありがとうございます!』
「帰る時…監督に感謝されたよ……チサトちゃんみたいな子…よく見つけて推薦してくれた…って」
『…嬉しい……本当にタケルさんのおかげです!』
感激しているチサトに
タケルは笑顔で頷いた
30分程走った後
車は大きなマンションの地下駐車場へ滑るように入っていく
車を停め、後部座席に回ったカヲルがドアを開けると
チサトは車を降りた
エレベーターに乗り込むと
カヲルは鍵を回し、最上階のボタンを押した