第1章 クランクイン
その日の撮影が終わり
チサトが帰るための身支度をしていると
楽屋のドアが軽くノックされた
マネージャーが返事をしてドアを開くと
そこにはカヲルが立っていた
「…三神さん……どうかなさいましたか?」
「…タケルからの伝言をお伝えしたいのですが……少し失礼してもよろしいでしょうか…?」
「…ぇ……えぇ…もちろんです!…もう着替えも済みましたので…どうぞどうぞ…」
マネージャーの許可を得て
カヲルは楽屋の中に入ってきた
「撮影初日…遅くまでお疲れ様でした」
『…ぁ…ありがとうございます…』
礼を言うチサトに
カヲルは淡々とした口調で言った
「…蒼井さん……この後のスケジュールは空いていらっしゃいますか?……もしよろしければ…タケルが一緒に台本の読み合わせをしたいと申しているのですが…」
『…えっ………ぁ……』
少し戸惑ったように
チサトはマネージャーの方を見た
「…今日のスケジュールはもうこれで終了よ……三神さんから読み合わせに誘って頂けるなんて…すごいわチサト!ぜひお願い致します!」
『…ぁ……ハイ!よろしくお願いします!』
「そうですか…では駐車場でお待ちしております……帰りは私共がお送り致しますので…マネージャーの方はこちらで大丈夫ですよ」
「……まぁ……ご丁寧に…ありがとうございます………本当に良かったわね…チサト…」
カヲルが楽屋を出て行くと
チサトは慌てて荷物をまとめた
『…じゃあ……行ってきます』
そう言って楽屋を出ようとすると
マネージャーがチサトの両肩に手を置いた
「…チサト…上手くやるのよ………俳優さんは気難しい方が多いから……一度でも怒らせたり…機嫌を損ねたらおしまいなの……くれぐれも気を付けてね…」
『…ぇ……ぁ………ハイ!頑張ります!』
チサトは笑顔で「お疲れ様でした」と言うと
地下駐車場へ向かった