第6章 共演者

５日後

ドラマの撮影でスタジオ入りしたチサトは
衣装に着替え前室へ向かった

タケルの後ろ姿が見えた途端
無意識に身体が緊張した


『…おはようございます』


その声に振り返ったタケルは
そっけなく「おはよう」と返し
それまで話をしていた相手の方へ再び視線を戻した

タケルと楽しそうに会話をしている相手
それは女優の"滝本アリス"だった





「…お話中…申し訳ありません………滝本さんに…ご挨拶させて頂いても宜しいでしょうか…」


マネージャーに促されチサトが挨拶をすると
アリスはとても感じの良い笑顔で答えてくれた


「…アレ？３人で会うのって初めてじゃない？」

『……ハイ……顔合わせの時…三神さんはいらっしゃらなかったので…』

「…そっか…タケルがサボったんだったね…」

「……サボってねーよ………仕事だ…」

「…クスクス…どーだか…」


タケルとアリスはとても親しげに話していた
チサトは２人とは少し離れた席に座り出番を待った




撮影が始まると
それまで笑顔だったアリスの表情が変わった

子役の頃から天才と謳われてきた完璧な演技力は
彼女の圧倒的な美しさと相まって
チサトは鳥肌が立つのを感じた


タケルとの息もピッタリで
監督も絶賛し通しだった




アリスの素晴らしい実力を間近で見て
チサトは憧れの気持ちを抱くと共に自分も演技の勉強をもっと頑張っていこうと決意を新たにした