第19章 last play ※
東の空が
白くなり始めた頃
タケルの腕の中で目を閉じていたチサトが
ゆっくりと身体を起こした
『…………そろそろ……帰りますね……』
そう言ってベッドを出ると
身支度を始めた
「………チサト…?」
少し心配そうな声に
チサトは精一杯の笑顔で答えた
『……………大丈夫です…………………気持ちの整理がつくのは……まだまだ先だと思うけど……………もう……馬鹿なことは考えません……』
「……」
『…………心が押し潰されそうになっても………大切な人を想えば………私達は…もう……ひとりでも眠れる…………………そう……ですよね…?………タケルさん…』
「………………うん…………そうだね……」
タケルは微笑んで頷くと
起きあがってシャツを羽織った
母親の愛情を求めて
全てを差し出したタケル
自分のした事を負い目に感じ
タケルに服従したカヲル
2人はまるで
鳥籠に捕らえられた2羽の小鳥のようだった
靴を履き終えたチサトは
タケルの瞳を真っ直ぐに見つめて言った
『……タケルさん………あなたも…もう自由になってください…………カヲルさんも……きっとそれを望んでる…』
タケルの瞳から
大粒の涙が零れた
チサトは指を伸ばし
タケルの頬を拭うと
瞳を閉じ
唇にそっとキスした
『さよなら』
チサトは微笑んでドアを開けると
振り返らずに
部屋を出て行った