第15章 storm
撮影スタジオでの事故から
数日が過ぎたある日の午後
十字架の彫刻が施された真っ白な墓碑の前で
タケルはひとり立ち尽くしていた
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仕事の性質上
付き合いが広かったため
葬儀には大勢の人々が参列し
若くして突然この世を去ったカヲルの死を悼んだ
けれど
その中に
チサトの姿は無かった
体調を崩して寝込んでいるため連れて来ることが出来なくて申し訳ないと
彼女のマネージャーが
タケルに直接詫びの言葉を言いに来た
「……チサトの具合……そんなに悪いんですか?」
「………スタジオで倒れて以来…眠れてないみたいなんです………お医者さまからは心因性のものだということでお薬も頂いてるんですが……食事も喉を通らない状態で…」
「…………そうですか……………何度か電話をしたけど…繋がらなかったので…………心配で…」
「……スミマセン………あの子…ずっとスマホの電源を切ったままにしていて…………私が部屋に様子を見に行っても……いつも…明かりもつけずにボンヤリと座り込んで……たまに口を開けば…おかしな事ばかり…」
当分は仕事を休むことになりそうだと
マネージャーは肩を落とした
「………チサトに……会いに行ってみても…いいですか?」
「……もちろんです………タケルさんご自身がこんな大変な時に…本当に恐縮なのですが………もしよろしければ…訪ねてやってください…」
マネージャーは
チサトのマンションの住所と部屋番号を書いたメモをタケルに手渡すと
改めてお悔やみの言葉を告げ
他の参列者達と連れ立って帰っていった
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