第14章 クランクアップ
鋭い叫び声が上がり
チサトは更に身体を竦めた
慌ただしい足音に混じって
怒鳴るような大声が飛び交う
突然の出来事に頭がついていかず
しばらくの間放心していたチサトは
マネージャーに肩を揺すられて我に返った
「チサト!怪我はない⁉︎」
『…………はい……』
顔を上げると
大型の照明器具に右脚を挟まれたタケルが
血溜まりの中に倒れているのが見えた
スタッフ達数人がかりで器具を持ち上げ
タケルは這い出るようにして脚を引き抜く
『タケルさん!大丈夫ですか!』
チサトが慌てて側に寄ると
タケルは震える声で言った
「………俺は……大した事ない…………それより……」
青ざめた横顔の視線の先に
スーツ姿の男性が横たわっていた
『…………ぇ……』
男性の身体の上から照明器具がどかされると
周りにはすぐに人だかりができた
遠くからサイレンの音が聞こえて
救急隊員が駆け寄ると
邪魔にならないように人々が後ろへ下がっていく
その時
チサトの居た場所から
初めて男性の顔が見えた
額から血を流したカヲルは
顔の半分が真っ赤に染まっていた
『……………ウ……ソ……』
ぐったりと力ない身体が
キャスターの付いた担架に乗せられ
足早に運ばれていく
別の隊員から処置を受けていたタケルが
無理に立ち上がろうとして止められていた
「僕も一緒に乗せて行ってくれ!」
「ダメです!骨が折れてますからすぐに手当てしないと!」
「そんなのどうだっていい!離せ!」
タケルは隊員達を振り払うと
脚を引きずりながらカヲルの後を追ってスタジオを出て行った
「…大変なことになったわね……今すぐ社長に連絡しなくちゃ…」
マネージャーの声が
遠のいていく
目の前がぐらりと揺れ
チサトはその場に倒れた