第14章 クランクアップ
残っていた数カットの撮影は順調に進んで
日が落ちる頃
いよいよ最後のシーンとなった
準備が整ったとの知らせを受けたチサトはスタジオに向かい
前室から出て来たタケルと合流した
スタンバイ中
一度だけカヲルの方へ視線を向けた
穏やかな表情でそっと頷くカヲルの姿に
微笑みを返したチサトは
目を閉じて深呼吸した
晴れやかな気持ちのまま演じたラストシーン
監督のOKがかかると
大きな拍手が上がった
タケルとチサトをスタッフ達が囲み
監督から花束が手渡された
「……2人とも…最後まで素晴らしかった………本当にありがとう……」
「『ありがとうございます」』
笑顔の2人に
スタッフから声が掛かった
「お二人から一言ずつ挨拶をお願いします!」
『……ぁ……では……スミマセン…お先に私から…』
そう言って
チサトが感謝の言葉を話し始めた時
頭上から金属の軋むような音が聞こえた
無意識に音のした方へ目をやると
天井に吊り下げられていた大きな照明器具のひとつが
真上から落ちてくるのが見えた
「あぶない!」
足がすくんでしゃがみ込んでしまったチサトに覆い被さるようにしてタケルが庇った
ドンッ
強い力に押され
2人が地面に倒れた
次の瞬間
ガシャーン
照明器具が割れる
大きな音が響いた