第12章 play 9 ※
車の中で
2人は一言も口をきかなかった
マンションの地下駐車場に着いた時
慌ててドアを開け外に出たチサトの後を追うように
カヲルも車から降りた
「…………チサト…………本当に済まない……」
思い出したように涙が込み上げてきて
チサトは唇を噛んだ
『……』
カヲルは言葉を続けた
「……クランクアップまで…あと2日…………撮影が終わったら……俺はこの仕事を辞めるつもりだ…」
『……』
「………タケルは…移籍させる………………これまでにも……何度もアイツにこの話を持ち掛けた事があった…………いつも聞き入れられず…実現できなかっただけで……先方の事務所とはずっと以前から話がついてるんだ…」
『……』
「……俺は日本を離れる………チサトの前には…もう2度と現れない…」
『……』
「……………チサトの事…こんなに傷つけておいて………許してもらえるとは思ってない…………でも……これだけは言わせてくれ……」
カヲルはそう言うと
深く頭を下げた
「……全部…俺のせいだ…………本当に……申し訳なかった…」
『…………っ……』
チサトは何も答えないまま
小走りにその場を立ち去った