オレはファンとレーサーでなく彼女とカレになりたい[東堂夢]
第2章 キミのすべてが欲しいんだ
私は幸せでまた泣き出しそうだったけど、次の東堂くんの一言で、もっと舞い上がった。
日焼けした右手を、差し出して東堂くんは言った。
「この手を取ってくれ、。
そうしたら、キミだけを一生大切にできると、確信できる」
私はその手を迷わず取った。
東堂くんがぎゅっと握り返してくれる。
温かい。
ふたりきりで、誰もいない裏庭を歩きながら、話す。
「今度は和菓子に挑戦してみないか、。
オレは老舗旅館の息子でな。
小さい頃から和菓子を食べて育ったんだ。
特におはぎなんかが好きだな」
初めて知る、教えてくれる、東堂くんの色々なこと。
「もう他の女子からの差し入れは受け取らんよ。
必要ないからな。
彼女たちの心情をおもんばかると、少し心苦しいが……」
「ううん、受け取って?
だってそのコたちは東堂くんのこと、大スキで、いつだって一生懸命なんだもの」
東堂くんは少し、淋しそうなカオをした。
「『ファンとして』!、大スキなはずだから!」
そう付け加えたら、東堂くんは安心したように微笑んでくれた。
「ところで、お前、開会式の時どこにもいなかったろう?
閉会式も。
どうしてオレの演説を聞いてくれなかった?」
「だからエスパー過ぎるでしょ!」
ハートのステンドグラスに映ったのは、きっと東堂くんとの、明日の物語。