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【呪術廻戦】無下限恋愛

第20章 呪胎戴天


「虎杖くん」


 その頰に触れて、虎杖くんの目から流れる涙を拭った。

 指に触れた涙が、私の指をチクリと刺して、消えていく。


「死ぬのが怖くない人なんていないよ」


 怖くて、怖くて、仕方ないの。

 死ぬのが怖かったから、私は今日まで生きていたの。


「怖かったから何度も生き残ったの」


 みんなが死んだ街で。

 血濡れた世界で。

 それでも私は……。


「自分だけ、のうのうと生き残ってきたよ」


 死ぬのが怖いのは当然だって。

 自分に言い聞かせて。

 そうやって何度も誰かを呪って。

 全部みんなの呪いのせいにして。


「私はそうやって、誰かのせいにして生きてきたよ」


 何事もなかったみたいに、全部他人事にして。


「でも虎杖くんは違うでしょ」


 虎杖くんの手から力が抜ける。

 だから、私はその手を押しのけて、虎杖くんと向き合うように座った。


「今ここで生き残っても、虎杖くんは結局、自分で自分を責めちゃうんだよ」


 そんな虎杖くんだから、伏黒くんは虎杖くんを助けたんだよ。

 そんな虎杖くんだから、私は呼びに来たんだよ。


「私の知ってる虎杖くんは、そういう人だよ」


 ごめんね、虎杖くん。

 虎杖くんは何も悪くないのに。

 私は、虎杖くんに頼ることしかできないの。


「虎杖くん」


 役立たずで、ごめんね。
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