第20章 呪胎戴天
「畳み掛けろ!!」
伏黒くんの式神が宿儺にぶつかった。
たしかに、その攻撃は宿儺に当たってる。
でも、当たってるだけなの。
破壊された大蛇を見つめる、伏黒くんの顔は絶望に満ちてる。
(伏黒くんに、そんな顔……させたくなかったよ)
感覚なんて、なくたって。
力の入れ方が分からないだけで、動かすことはできる。
大丈夫。
《広く使おう》
今しか、ないの。
「伏黒くんを……離して」
腰に差していた、赤鞘の小刀を手にして、声を振り絞った。
《……その身体で、よく動けたな》
無様な私を見て、宿儺が笑ってる。
玩具がまだ壊れてないことを喜んで。
《そう焦るな、皆実。オマエは最後だ。……すぐ終わらせるから、待っていろ》
「綾瀬、動けるなら逃げろ! 俺のことは放っとけ!」
放っておけるわけないじゃん。
もし、伏黒くんが死んじゃったら。
私はまた、1人生き残って。
今度は生き残ったことを、伏黒くんのせいにするの?
「そんなの……やだよ」
手にした小刀が、私の手の震えに合わせて小刻みに揺れる。
怖いよ、怖いけどさ。
みんながいなくなるのは……もっと、怖いんだよ。
《呪具でもないその刀……俺には効かぬぞ》
その通り。
「分かってますよ……そんなこと」
私の攻撃も、伏黒くんの攻撃も、おそらくこの場にいる誰の攻撃も宿儺には効かない。
「だから、攻撃するのは……アナタじゃない」