第10章 秘匿死刑③
「結構強力な結界張ってるんだよ。呪霊も、外の呪力も絶対にここには入ってこない。……だから、この部屋の中にいるときは身体平気だろ?」
ずっと不思議だった。
五条先生の部屋にいるときは全然呪いが流れて来なくて。
本当に静かで。
うるさいのは、五条先生くらいで。
「僕の呪力が途切れても結界は解けない。代わりに結界内……つまり僕の部屋の中ではそもそも術式が使えない。ま、呪力操作はできるみたいだけどね。そういう縛りで張ってある。だから皆実が考えてることは最初から杞憂なの」
さすが、というか。
何も言えずにポカンと口を開けた私を五条先生は笑った。
「で、僕に触らないの?」
そう言われたら、遠慮するのも変な気がして。
五条先生の頬に触れた。
滑らかな肌をツツ、と撫でて。
「皆実」
五条先生は目を閉じた。
それが合図みたいに、私は五条先生に顔を寄せる。
「……ん」
私から始めたキスは、もう五条先生に奪われて。
角度を変えて、舌が何度も絡んだ。
そうして薄く目を開けた先には、目を細めた五条先生がいる。
「……おはよ、皆実」
日差しを浴びて、五条先生の髪が銀色に光る。
「おはようございます……五条先生」
挨拶を返して。
また私は五条先生と唇を重ねた。
そうして、私と五条先生の関係は、また新たな形に歪んだ。