第5章 開会式
キバナは一度口を開いたが、声を出す前に止まり、なんて声をかけていいかと思い、口を閉じた。
(小せぇって思ってたけど、しゃがんだらもっと小せぇな。ピィみてぇ・・・あーぁ、奢られとけって、初めて言われたわ)
キバナはフッと微笑むと、の無防備な頭に自分の手を乗せた。
「ありがとな、奢ってくれて。あんまり奢られたことなかったから、ちょっと慣れてなかった」
の頭の上に置いていた手を、キバナは手触りのいい髪をグシャグシャ撫でる様に手を動かした。
「だから今度俺さまに奢られとけ、わかったな」
「・・・奢ってくれるんですか?」
「おう、奢る奢る。今度いいとこ連れてってやる」
ソロリと顔を少し上げて、指の隙間からはキバナを見上げた。
キバナはやっと顔を上げてくれたに一安心しつつ、ニカっと笑いながら行った。が、しかし---。
「・・・嫌です」
「・・・は?」
「解釈違いです。私はいちファンであって、他にもキバナ様のファンはいっぱいいます。私だけこんなファンサはちょっと困ります」
にさっきまでの照れた様子ではなく、冷めた様な、無表情の顔で淡々と応えた。その様子に、キバナはいい感じだと思っていた幻想を砕かれ、ピシッと岩の様にその場に固まった。
そして撫でるのをやめていた手に力がグググと込めた。
「いたっ!イタタタ!キバナ様?!手が!手が食い込んできますううう!!!!!」
「俺さまに奢られたいよな?そうだろ?」
「いやいやいや!圧力と握力同時にかけるの良くない!」
頭に食い込んでくるキバナの手をは両手で押し退けようと頑張ったが、キバナの手はうんともすんとも動かず、むしろジワジワと握力が強くなるばかりだ。
「まだまだかけられるぜ」
「イタタタわか、わかりました!奢られたいです!私キバナ様に奢られたくて仕方ないですううう!!!!」
「ん。素直でよろしい」
「す、すなお・・・!?」
握力がなくなった頭に置かれたままのキバナの手は、またグシャグシャとの頭を撫で回した。
(キバナさまって結構強引なんだな・・・てかキバナさまいつまで私の頭撫で回すの?!嬉しすぎてハゲるんだけど!?!?)
はまたジワジワ顔に熱が困るのがわかった。