第17章 始まりの一歩
意識がだいぶ浮上してくると、ダンデ、キバナ、ルリナ、ヤローから痛いぐらいしの視線を受けてiいることに気付き、はビクッと震えた。
そして昨夜、自分が何をしたのか鮮明に思い出し、の目は段々と潤み始めたが、静かに上体だけを起こした。両手を目元に当てて、そこに何かがあるのを確かめる手付きだった。
その様子を見ていた四人も、息が詰まりそうになりながらも、何も言わずにの言葉を待った。
「…倒して…くれたんですね…」と、はポツリとつぶやいた。
「本当に…ごめんなさい…ご迷惑、かけて……」
ポタ、ポタと、俯いているの両手から、涙が溢れた。
「痛いところはないか?」
ダンデは優しく問いかけた。その問いかけに、は足を折り曲げて体育座りのような格好になった。体を縮こませ、震えていた。
「…痛い思いをしたのは…ダンデさんたち…ですよね…」
は声を振り絞るように話し出した。
「巻き込んでしまって…ごめんなさい…」
後悔しても、もう遅いのだとはしみじみ感じた。もしもう少しだけ、立ち向かう勇気が自分にあれば、逃げ出すような弱い心さえなければ、もっと強い人間だったならばと、気持ちは暗くなるばかりだった。
(こんなことになるんだったら、来るんじゃなかった…出会わなかったら、巻き込むこともなかった……もっと私が強かったら、仮面なんて…)
『あと一勝でサブウェイボスとバトルできたのに、四十九車両目の駅員に全然勝てないんだけど』
『空気読めよなー』
『例の駅員の人、サブウェイボスと絶対寝てる』
『二股してそー』
『サブウェイボスより強いって噂あるけど、お前に勝ってもトロフィーもらえないっつーの』
『誰かあの駅員潰してよ』
『早く消えてくれないかな、あの女。インゴさんの周りウロついてマジ邪魔なんですけど』
どうして、こうなっちゃったんだろう…。
ただポケモンが好きで、バトルが好きで、楽しいと思ってるから一生懸命やってたはずなのに…。
バトルをしに来てくれる人たちが、どう思ってるのか、目を合わせるのも怖かった。
わざと負ければ、インゴさんに何を言われるかも怖かった。
負ければ、負けてしまったら----もっと怖くなった。