第16章 月と太陽
「----皮肉なもんだな、お前が作り上げたものにいらないって捨てられるなんてよ」
キバナの横に張り付けられたインゴは、無言のまま、嬉しそうな声で笑っているをぼんやり見下ろしていた。よほど応えたのか、それとも信じられないのか、インゴから反応はなかった。
は先ほどから笑って、クルクルとその場で回って踊っているようにも見えた----「自由だ!」と、叫ぶその姿はどこか狂気じみて見える。
ピタリ、とは急に動きを止めると、良いことを思いついたとポンっと手を叩いた。
「お昼の船まで待てないから、ギャラドスに乗って行こう!」
良い案だと、が歩き出した。その後にメタグロスも続くが、サイコキネシスが解かれた気配はない。
(このまま行かせたらマズいだろ!!考えろ俺!アイツを、をここに留めさせるには----)
キバナだけではなく、他のジムリーダーたちも考えは同じなのか、お互いに目配せさせた。
「ガラルには、まだ彼がいるわ!」
叫んだのはルリナだった。その叫びに、は足を止め、ルリナを見上げた。他のジムリーダーたちもハッと気が付き、次々に叫び出した。
「ダンデがいる!このガラルで…最強のトレーナーよ!!」
「そうよ!倒さずにどこ行こうっていうのさ!」
「ダンデ君はきっとここに来るんだな!!」
「ガラルを出るというなら、彼を倒してからにしなさい!!」
ルリナ、メロン、ヤロー、カブが必死にを止めようと叫んでいると、叫ぶわけでなく、を見下ろしていたネズが呟いた。
「そもそもお前、ダンデに負けてますよね」
他のジムリーダーを見ていたは、ネズの呟きを拾い、ネズの方を見上げた。
「このままこのガラルを去るというなら、お前はダンデから逃げたことになる----そう思ってもいいんですか?」
かなり挑発するような言い方に、他のジムリーダーたちは少しヒヤヒヤしたが、それに助長するようにキバナも叫んだ。
「証明して見せろよ!今のお前が本当に最強なら、ダンデを倒してみせろ!!」
キバナの叫びが当たりに響くと、は、それはそれは嬉しそうな声で答えた。
「わかりました、キバナ様♡」