第15章 真夜中の開幕劇
場所は変わり、雲の少ない夜空を大きな黒い鳥がタクシーを運びながら、バウタウンへ向かっていた。タクシーの中には大の大人が四人、少し窮屈そうにして席についていた。
後部座席にはダンデとキバナが座り、向かいにはネズとエメットが座っている。
「--つまり、コイツもを狙ってたってことでいいんだよな、ネズ」
怒りを抑えながらも、キバナは前に座っているエメットを指さしてネズに確認した。
「自分から正直に話してくれましたよ。お前とダンデが考えなしにを追いかけて行った時はどうしようかと思いましたが」
「しかも逃しちゃうなんて信じられなーイ!」
「ああなったのはお前のせいだからな?」
「痛タタタタ!!!」
キバナはエメットの膨らませた両の頬を片手で掴むと、ギリギリと力をこめた。「チッ」と、舌打ちをしたキバナは、エメットの顔から手を離した。自分の隣に座っているダンデは、窓に寄りかかって目を閉じていた。
規則正しい息をしていて、まるで眠っているようだった。
キバナとダンデがぶつかった時、キバナは意識があった。慌ててダンデに駆け寄ると、ダンデの意識はまだその時はあった。が、自分より打ちどころが悪かったのか、アーマーガァタクシーに乗った途端、眠るように意識を失った。
病院に連れて行かなくてもいいのかと悩んだキバナだったが、意識がなくなる前に、ダンデはキバナに頼み事をしていた。
『…俺を、の所へ…連れってくれ!頼む、キバナ…に…伝えないと、いけないことが…あるんだ』
(ただの脳震盪でいてくれよ、ダンデ…)
早く目を覚ませよと、キバナが心配の眼差しをダンデに送った。
「----で、なんでは俺さま達から逃げたんだ?」
視線をダンデからエメットに変えたキバナは、静かにエメットを睨みつけた。普段は温厚でいるキバナから、静かな怒りをエメットに向けていることで、車内は妙に重々しい雰囲気が漂った。
普通の人間であれば、それだけで恐れ怖がるだろうが、エメットはキバナに睨まれてもケロッとした表情で、少しも動じてもいない。
「あれはネ、他人の目が怖いんだヨ---ちゃんが傷付いたのは、インゴだけじゃないって言ったでショ」
笑顔で話し始めたエメットに、二人は静かに見据えた。