第10章 チャンピオンカップ
「ドラピオン…メタグロス…ハッサム…ラグラージ…リザードン……もう、なんで出てくるの…みんな、ポケモンセンターに直行なんだから…!」
ボロボロのポケモンたちの姿を見て、の涙腺は更に緩んだ。
「みんな、ごめんね…1番になるって言ったのに……勝てなかった…っ」
手で拭った涙が、拭っても溢れ出した。
「ゲーン…」
「ドラァ…」
ゲンガーはよしよしと、更にの頭を撫でまわした。
「勝たせてあげたかった…だってみんな、すごく頑張ってくれたもん…」
「ラグゥ…」
「…サッ」
「メタ…」
ポケモンたちもの周りに座り込み、優しい眼差しをに向けていた。
「負ける事がこんなに悔しいなんて…知ってたのに…っ」
悔しい、悔しいと、思いが止まることを忘れたように溢れ出てきた。
「バギュ」
リザードンの鳴く声に顔を上げると、ベロりと涙でしょっぱくなった頬を舐め上げられた。
「バギュア!」
まるで励ましてくれようとしているリザードンに、は手持ちのポケモンを見回した。誰もを咎めるような目で見てはおらず、泣いて悔しがっているを見てどこか安心したような顔をしていた。
「っ…みんなぁ…!!」
さらに涙腺が緩みだし、はたまらず目の前にいたラグラージとハッサムに飛びついた。
「うわあああああん!悔しいよおおおおお!!!!」
本格的に泣き始めたに、ポケモンたちはホッと安心の一息をついた。やっと主人が昔のような感情を取り戻し、そして涙の理由が悲しみの色ではなく、悔し涙を流していること。
ラグラージ、ハッサムもの方を優しくポンポンと叩くと、はますます涙が止まらなくなってしまったのだった。
「----お前の主人は、ちょっと取り込み中のようですね」
控え室の外にかすかに漏れるの泣き声に、ネズは抱えていたエレズンに話しかけた。
「もう少し、歩いてきましょうか」
「エレ」
エレズンも察したのか、それともまだ世話をしてくれるネズを気に入っているのか、腕の中で大人しく頷いた。