第3章 迷走
「言いたくなかったら言わなくていいんだけどよ、一応連れってたの俺な訳だし、ちょっと気になっただけだわ」
「キバナ様・・・(や、優し〜!てか最強の推しに心配せてたの!?ちょっっと私一回殴っとこうか)」
少し気まずそうにキバナが言った。
二人の間に沈黙が流れ、は何を話せばいいかわからず、目線がキバナからテーブルを行ったり来たりした。
その間に店員が料理を運びに来て、の目の前にはキッシュを。キバナには本日のお勧めであるミートボールスパゲティーが置かれた。
(キバナ様とスパゲティー・・・(合掌))
は悩んでいた。
どこから話せばいいのか、なぜ逃げたのか、過去のことを話してもいいのか、食事を始めているキバナを見て小さなため息をついた。
「・・・チャンピオンカップの推薦状を、いただいたんです」
そして恐る恐る、は考えながら話し始めた。
「!」
「この間の引ったくりの件で、たまたま取られたものがローズさんに必要な書類だったらしいんです。でもやっぱり私にはちょっと釣り合わないっていうか、ただもっと見合う人がいると思ってお断りしました」
「ふーん・・・見合わないってのは、まぁ人それぞれあるけどよ、ガラルのチャンピオンカップって滅多に出れないぜ?その推薦状が欲しいやつなんてこのガラルにごまんといる。もったいないんじゃねぇか?」
「・・・」
「何悩んでだか分かんねーけどよ、俺はお前と戦ってみたいぜ」
「え・・・」
「トレーナーなら、目が合ったら勝負だろ?」
「っ・・・そ、そうですけどぉ///(ドストライク過ぎて顔直視できるかーーー!!!!)」
キバナからの「戦ってみたい」に、バッチリと目が合ってしまったは赤面した。
「・・・ま、俺さまはジムリーダーだから、そう簡単に戦ってやんねーけどな」
と、意地の悪いことを言い残して、キバナは残ったスパゲティーに手をつけた。
(・・・心臓持たない・・・)
ギュッとは心臓を押さえつけ、目の前のキッシュにやっとフォークを刺した。