第9章 遠い存在
お互い静かに見据えた後、二人は所定の位置についた。会場はすでにバトルが始まるのを今か今かと、期待と興奮で昂っていた。
二人はボールを二つ構えると、バトルフィールドに投げ込んだ。キバナは黄緑色の美しい鱗、砂漠の妖精と言われる美しい羽音のフライゴンと、ボールから出たと同時に、ズシンと頑丈な岩が地面に地を着く、ギガイアス。
対するは赤い鋼のボディを持つハッサムと、水色の両手足を地面につけ、グルルルと、低い唸り声をあげて出てきたラグラージ。
ザァアアアと、砂が四匹の周りを覆い始めた。
『それでは!ナックルジムのキバナと、ジムチャレンジャーの2対2の公式試合を始めます! 始めっ!!!』
レフリーのダンペイが開始の合図を唱えると、周りを漂っていた砂は勢いを増して強くなった。砂が舞うフィールドで、は目を細めて前を見た。
「吹けよ風!呼べよ砂嵐!」
ギガイアスの特性砂おこしで、会場は一気に砂嵐に包まれた。
「(まずは厄介なギガイアスから)ラグラージ、ギガイアスに冷凍ビーム!ハッサムはギガイアスにバレットパンチ!」
「そうはさせるかよ!ギガイアス、ロックブラストで冷凍ビームを受け止めろ!フライゴン、鋼の翼でハッサムの攻撃をいなせ!!」
ギガイアスは口をパカっと開くと、口元に小さな岩が集まり、一つの大きな塊になると、向かってきた冷凍ビームに放った。ロックブラスに当たった冷凍ビームは一気に凍りつき、ゴトン!と大きな音を立てて地面に落ちた。
ガキン!と、拳と羽の鈍い鋼の音がギガイアスの顔近くで響いた。フライゴンの羽が鋼となり、ハッサムの拳を抑えていた。両者は押し負けまいと、拳と羽に力をこめた。
「ラグラージ、技に気をつけてギガイアスに向かって!」
ギガイアスのロックブラストは一発だけで終わらず、次から次へとラグラージに向かって岩を狙い続けた。
「そいつを近づけさせるんじゃねぇフライゴン!雷パンチ!!」
フライゴンは一度ハッサムから距離を取ると、右手に電気を纏わせると、ハッサムに連続で振りかぶった。ハッサムは雷パンチを後ろへ下がりながら避け続けた。
「ハッサム、ラグラージの後ろまで下がって!」
の指示で、ハッサムは大きく後ろへ飛び上がり、岩を避け続けているラグラージの後ろについた。