第2章 推薦状
【ダンデ視点】
せっかく会えたと思った彼女の手を掴んでいたはずなのに、あっさり引き抜かれて、またいなくなってしまった。
彼女とはこれで二度目の対面だが、どうしても彼女には逃げられっぱなしだ。彼女の手を掴んでいた手の熱が、だんだん冷えていくのが分かった。
「…」
「…デ……ンデ君、ダンデ君」
ローズ委員長が俺を呼んでいるとわかり、ハッとして彼を見た。彼はいつもどうりの穏やかな顔で、目が合うと
「君も中々大胆な行動に出るんだね、初めて君のそういうところを見たよ」
改めて自分がとった行動を思い返してみると、さっきのは少し強引だったかもしれない。
「…何故か分からないんですが、彼女を見ていると落ち着かないんです」
・・・・・
昨日の彼女のバトルを見てから、目が離せなくなった。たまたまキバナのところに用事があり、ナックルシティの城から二人で見かけたのだ。
「引ったくりだ!」「誰か!」と、街が騒がしく、俺とキバナは目をわせてモンスターボールを手に取った時だった。
「いくぞ、キバナ!」
「言われなくたって分かってるぜダンデ!」
その時、引ったくりの目の前に彼女が飛び出してきたのが見えた。男がポケモンに指示を出し、彼女に辻斬りが迫っていた。
「バカあいつ!何やってんだ!」
技が迫り来るのに対して、彼女はモンスターボールを構えた。
投げたモンスターボールからハッサムが飛び出し、辻斬りを弾き、そして隙のないシザークロス。
俺はその時見たんだ、彼女の目に潜む静かな戦いの炎が。
背筋がゾクッとした。言いようのない何かが俺の中に走って、彼女から目が離せなかった。
それでもそれは一瞬で、戦いが終われば彼女はハッサムを労り、周りに人が集まり出していた。あの静かな炎は消えていた。
「ヒューゥ♪相性もあるが一撃かよ。あの引ったくりは運がなかったな」
「…」
「ダンデ?」
「…え?ああ、そうだな。すぐジュンサーさんに連絡をしよう」
「あの人だかりだ、俺が道を開けるようにちょっと行ってくるわ。あ、お前はここにいろよ、目立つからな」
「あぁ。そうさせてもらう」
キバナにそう言われたはずなのに、俺の体は勝手に彼女のところへと向かってしまった。