第1章 出会い
「やっと…着いた、ガラル地方!」
キラキラ輝く青い海の遠い先で見える緑色の大地。
ザザザとフェリーがゆっくりと、しかし確実に波を切って進んでいく。
クゥ、クゥと鳴くキャモメがフェリーの周りを飛んでいて、上陸はすぐそこだと教えてくれる。
天気良好、フェリーも無事の航海。
このガラル地方に着くまで、すごく時間がかかってしまった。
十年、大変だったけどあっという間な感じもした。
それでもずっと会いたかった人がここにいる。
「はぁぁぁキバナ様に会えるかなぁ〜!サイン欲しいけど一目見れたらもう最&高!あわよくば応援してます!って声かけたい…!!なんて///」
突然だけどこんにちは!私の名前は。
今ほんのり赤く色づく頬を押さえて、フェリーのデッキで一人悶えているキモヲタは私!ポケモン歴XX年!!
色々あってポケモンの世界に異世界転生してしまった最高にラッキーなヲタクである。推しのキバナ様を拝みに十年かけていろんな地方を旅してきた。
え?十年はかかりすぎ?
ですよねー。わかってます、でもでも転生先がカントー地方よ?
初代からずっとプレイしてきた私に、こんな美味しい話はないと思って、ガッッッツリ聖地巡礼してきました。最高でした、ご馳走様です(合掌)
転生に気がついたのは、私が5歳の時。流石に財産的にいきなりガラルは厳しい!こっちの両親に迷惑もかけたくなかったし、地方をめぐりながらなら、フェリー代も少し安いし!
子供時代のキバナ様を拝めなかったのは本っっっ当に残念だけど、この間たまたまアローラで見つけたポケモン雑誌で、キバナ様特集が組まれてて発狂した。死んだ。嘘、嬉しすぎてその場でむせび泣き崩れて店員さん困らせた。
尊いが詰まった特集でした、特集組んでくれた雑誌会社GJ!!!
でも、その苦労も今日で終わり。
だって、もしかしたら会えるかもしれないから。
ネットや雑誌じゃなくて、本物の…。
「モノホンキバナ様とか…っ///死ぬ!一目見れたらとかふざけんな!!!尊すぎて目が潰れるわ〜〜〜!!!!」
そんな私の後方にある大型テレビで、ガラルについて放送がされているのに気がついた。
『ガラルといえばこの人!チャンピオンダンデ!!!』
まさかこの人が私の人生に深く関わってくるなんて、この時はまだ考えもしなかった。