第25章 みじかいおはなし ※裏なし お相手:色々
その日は少しばかり
気怠い様なそんな怠さがあった
体調が悪いと言うほどでもなくて
ちょっと疲れているという程度だった
ついていたつもりは全くなかったのに
ふぅっと小さく
みくりが漏らしたため息
それが彼の耳に届いて居たらしい
漏らした本人ですらも
気が付かないような
そんなため息だったのに
食卓の上に空になっている
皿を重ねて
台拭きで食卓を拭こうとした
その手を止める様にして
上から大きな手が重ねられた
「後は…、俺がしよう。君は休むといい」
「へ?あの…杏寿郎さん?でも…、
杏寿郎さんもお仕事からお戻りに
なられたばかりでお疲れでしょうのに…」
「俺の仕事に非番はあるが…、
君の仕事には非番がないだろう?」
「え。あの、しかしですね?
片付けを…してしまいません事には…」
そのまま 後ろに居る彼の身体に
自分の身体を預ける様に促されて
「いいから、楽にするといい。」
「こう…ですか?」
促されるままにそうすると
「そうだ。いい子だ」
「もう。子供扱いしないで下さいっ」
そう言って むうっと
みくりがふくれっ面をすると
「ははははは。気を悪くしてしまったか?
それはすまない。…機嫌を直して
欲しいのだが?俺の可愛い奥さん」
「そうやって、都合いい感じに言う…」
「別に都合がいい様に言っている、
…訳ではないのだがな。みくり…」
チュウっと額にひとつ
口付けを落とされた
「いつも、家の事を君に
任せきりにしてしまってすまないな。
君が留守を守ってくれているから。
俺はこうして、仕事が出来ている。
君には感謝するばかりだ…。
みくり。ありがとう」
愛おしいと思う人が向けてくれる
その太陽の様な笑顔を見ていると
さっきまであった気怠さが
もう感じなくなってしまっていて
「お礼には及びませんよ?杏寿郎さん。
お礼を言うのはこちらの方です。」
ありがとうございます 旦那様