第67章 春日の決意とカナエの配慮

『継いでも外からは
見える事はありませんので、ご安心を』


私が心配している事が
この人には分かってしまった様で

そう言いながら　既に仕立てが出来ている

引き振袖を２枚　あげはの前に出して来て

布地を継ぐのは裏地になるので
表からはそれが分からないと見せて来て


「それに、こちらのお着物は拝見する限り。
仕立てになられた方が、ご自身より
大きな方が着るの
を前提にして仕立てておられる様だ。
普通よりも、かなり多く余りが取ってある。
もしかしたら、引き振袖に仕立て直す事も
お考えの中にあられたかの様にも見える位に」


あの時は　カナエちゃんは
そんな話をしては無かったが
自分がそうしようとしてそうしたのか
もしカナヲがそうするならと思ってそうしたのか

その辺りは　当のカナエちゃん

本人にしか分からない事ではあるけど

でも　そのカナエちゃんの
カナヲに対する配慮のお陰で

何故だか私が恩恵を受けてしまって居たが

美しいラインの引き振袖に
仕立てる事が出来ると言われて


「では、少々色々とお仕立てに関する
ご相談の方を…させて貰いますが」


そう仕立て屋の主人がこちらに言って来て

その仕立て直しをした
引き振袖の裾についている比翼の部分に

使用する事が出来る生地を数種類見せて来て


「裾に厚みを持たせる為の、
比翼になりますが…
こちらの比翼を２重に重ねますと、
より豪華になりまして。
こちら、単色の比翼、こちらは
色味の違います比翼になります」


単色で重ねられている物と　

違う色で重ねられている物を

あげはの前に見せて来て

今の振袖の色に合いそうな生地を見せてくれる

その比翼の中に入れる綿の厚みも選べる様で

その色とりどりの生地の見本を

手に取って眺める


「でも、驚きました。比翼一つにしても
ここまでに色々にお色が選べるのですね。
それも、丁度、私の持っている振袖に
合いそうなものばかり…」


そこまで言ってしまってからハッとした