第2章 狼狽
「あ、の...終わり、ました」
「ん。」
振り返った彼の顔は、
相変わらず綺麗な顔だなぁと思いつつ
少し背が高い、目の前にいる推しを見つめる。
左目には包帯が巻かれていて
紫色の蝶の着物。
いつの間にか2人で見つめあっていたが
彼が優しく微笑みを浮かべた。
それはとても優しい顔で、
自分の緊張が少しマシになった。
「あ...。すいません。お、お顔が綺麗だなーって、ハハッ、ハハハッ」
「あと、へ、部屋狭くてすみません。あ、のイスないので、座布団でいいですか。」
焦りすぎて、自分でも何を言っているのか分からなくなりそうだ。
「いや、立ったままでいい。」
「は、い」
うぅ。椅子はあるけ一つだけの小さいやつだし
私は敷布団だからベッドに腰掛けられないし
何より、
今の格好はタイツ履いてないだけの制服...
いや、弁解させて?!
すぐに学校いけるの!楽なの!!
「お前。」
「はい!!」
「お前さっきからさん付けで呼んでるが」
「いつもそんなんじゃねぇだろ。毎日『高杉』っつって俺のぬいぐるみと話してんじゃねえか。」
「実物も、『高杉』って呼べよ。」
「な、なん、で...知っ...て。」
「は、恥ずかしい...んですけど」
「え、こんなこと以外なら恥ずかしくないのに、え、なんで...そんな...黒歴史になりうることを...」
「......へえ。言ったぞ、お前。」
「こういうのは」
「恥ずかしくないんだな?」
そう言うと、動揺していた私の腰と腕を掴み、一気に引き寄せた。
開いた口が塞がらない。
「お前やっぱり生娘か。」
「あ、...え?...」
「あァ?お前...もしかして、こっちには鈍感なのか?」
「いつもエロ本見てたのになぁ。」
「まぁ。あれBLだもんな。」
そこまで...知ってる...!!?
ってかこの状況はなんだ。
どういうことなんだ。
「分かるか?お前は今」
「"襲われる寸前"まで来てんだよ。」
妖艶な笑みを浮かべ始めた彼は
私の心を見透かしたかのように
真っ直ぐに見つめてきた。