〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第9章 調査兵としての日々
その後、エルヴィン等と共に訓練場から宿舎へと戻ってきたジルは午後から行われる入団式まで自室にいようと部屋へと向かった。
与えられた部屋へと戻ると訓練兵団のエンブレムが付いた兵服を纏う三人の女性兵士が荷解きを行っていた。
部屋に入ってきたジルに気づいた一人がジルに話しかけてきた。
「先に到着した訓練兵団の同期だよね?
私とこの子は西から、彼女は東から来たのよ。
貴方は南から、よね」
「ええ、南方訓練兵団出身のジル・ラディウスよ」
ジルは部屋にいた三人と挨拶を交わす。
「じゃあ、同期の女性兵士はこの四人ね。
北方からは女はゼロで男も三人だけだってさ」
無理もない、巨人は南からやってくる関係上、調査兵団本部は最南端の都市に置かれるものだ。
調査兵というものに馴染みのない北方出身の者が調査兵になるのは、タダでさえ少ない調査兵の中で更に稀なる存在である。
船で内地よりきた北方訓練兵団の新兵等は東西の者らとほぼ同じにシガンシナへと到着しており、この後すぐに入団式が執り行われるとのことだ。
調査兵団本部敷地内にある広場にて今期の入団式が執り行われていた。
短髪で初老の男─現調査兵団団長が何か話ている。
当たり障りのない至って当たり前な事しか言わない団長の話は昨夜の寝不足や今朝の訓練で若干の疲れを残していたジルの胸には何も響いてこなかった。
「心臓を捧げよ!」
漸く団長の話が終わり、最後にお決まりの掛け声でその場にいる全ての新兵が右手の拳を左胸へと置く敬礼を行い、今期の入団式は終えたのだった。