第5章 番外編
『時雨は、教授が好きだよ』
「え……」
「教授は嫌い?時雨迷惑かけたから、言い付け破って外に出たから。………怒ってる?嫌い?」
「……時雨、だって、わかんないって」
「わかんなかったよ。好きとかそんなの」
ドクン ドクン
て。
鼓動が早くなる。
「教授、心臓早いね」
熱い掌が、胸へと触れて。
時雨がふわりと、微笑んだ。
「教授が教えてくれたんでしょ?」
「俺が?」
「時雨はやっぱり、気持ちいいことに弱いね。すぐ流されちゃう」
「…………」
「でも時雨、雨音に流されなかったよ。ちゃんと嫌だって、思ったよ。だから、教授がいいの。教授だから、たぶん気持ちいいんだと思うんだよ」
「………時雨」
「時雨は教授が好き」
「うん」
「教授は?」
「………内緒。自分で考えなよ」
ぎゅうって。
時雨の細い肩を引き寄せ抱き締めた。
「なんか教授、かわいい」
『あんたの負け』
ああ、負けたよ。
ほんと。
こんなの初めてだ。
「教授?」
ベルトのホックを外して。
革のそれを、放り投げた。
「もうこれ、必要ないから」
「そうなの?」
時雨が逃げないように。
無意識に繋ぎ止めたかっただけ。
どこにも行かないように。
「ごめんね、首、苦しかった?」
首に回した革のベルトも、外して。
首もとへとキスをした。
「苦しくないよ?手も足も、痛くない。教授がすることはみんな、痛くないし苦しくない」
「けっこう酷いことした、自覚はあるんだけど……」
「嫌いじゃないみたい」
「は?」
「気持ちよかったもん」
「………っ」
「……きょーじゅ」
「うん、わかってるごめん。挿入ったままだし、無理」
あんな顔、されたら。
このくらいの生理現象不可効力だ。
「……時雨」
でも。
嫌じゃないなら。
「きょーじゅッッ」
自分の身体を後ろについた片手で支えて。
下から時雨の身体を揺さぶった。
「だってずっときゅうきゅういってんの、気づいてる?限界なんだけど」
「………違う意味で限界なんですけど」
ぎゅうって。
しがみつく時雨に笑みを浮かべて。
そのまま時雨の身体を下から突き上げた。
【番外編 完】