第3章 殺し屋業、復帰!!
もともとは。
時雨同様命じられるままにたくさん命を奪って来た。
それこそ、「子供だけは助けて欲しい」と懇願する両親と共に、躊躇なく子供まで手にかけたこともある。
だけどある時、ひとりで組をひとつ潰せ、と命令があった。
今にして思えば俺を消すつもりで、はじめから仕組まれたことだったのかもしれない。
なんとかやり遂げても、ひとりで多数を相手にするのはさすがにきつくて。
ましてやそんな汚い部分にどっぷり浸かってる連中だ。
こちらももちろん無傷ではいられなくて。
河川敷で、疲労と傷の痛みを休めていた。
たぶん数日。
傷口からの出血は止まらないし、体力は失われていく一方で。
ああもう死ぬんだ、って、死を覚悟した、数日後。
今の、社長に拾われた。
命を、救われたんだ。
「………教、授?」
「時雨も来ませんか?『こちら』側へ」
「え?」
「理不尽に命を奪って、何か得るものありました?食べ物も、着る服さえ不自由で。時雨は最低限の教養も与えられることすらなかったでしょう?兵隊はいくらでも替えがいます。でも時雨は、時雨でしかない。時雨の代わりはいないんですよ」
以前時雨が言っていた。
食べるものは冷えた弁当だと。
服は用意されたものを着る、と。
人の命を奪うことを仕事にしている人間が、お金に無頓着だった。
いくらでも高い報酬を貰っていいはずなのに。
物心着いた時から殺人術だけを教えられ、余計な知恵など一切与えず、自分たちの道具として扱っている組織の人間。
『お金なんて、使ったことないよ』
『いつも用意されたものを着て、食べて、寝るの。教授に教えてもらえなかったらこんな美味しいの、知らなかったね』
最低限の生活さえ与えられずに、ただ命令されるまま動く、感情のないモルモット。
奴らが望む形。
時雨が、それだった。
だけどそんなの、間違ってる。
人間としてちゃんとした人生、送っていい権利は、生まれた時に皆平等に与えられてるんだから。
「教授の言葉は難しくて、良くわかりません」
「時雨」
「でも、教授がそうしろってゆーなら、従うよ?」