第2章 絶賛失業中、です。
「雨音くんは、良かったんですか?」
「いいって言った!」
「大事な人なんでしょう?」
「そりゃ、大事だよ」
………即答。
天然ですね、時雨は。
「弟だもん」
………え?
「は?さっき友達って言ってなかった?」
「うん、友達」
「〰️意味わかりません」
「ずっと物心着いた時から一緒に育ったんだもん。ずっと弟としてそばにいたの!」
「……ああ、そういう」
彼の方は、友達とも弟とも思ってないようでしたけど。
気の毒に。
やっぱり天然ですね、時雨は。
「━━━━━お疲れ様でした。ホテルの方はこちらで対処致しますので。本日はごゆっくりお休みくださいとのことでございます」
「もちろんそうさせていただきますよ」
パーティー会場からリムジンへと乗り込み、マンションへとたどり着いた途端に頭を下げる、運転手。
ヒラヒラと手を振って、ロビーを抜けた。
「………言いたいことがあるなら聞きますよ?」
エレベーターホールに着くなり、いや、たぶんリムジンを降りた辺りから、かわいらしい顔を歪めて着いてくる時雨の視線には、もちろん気付いていましたとも。
「答えてくれるの?」
「内容によります」
「教授は、教授じゃないの?」
「ずいぶん変なこと聞きますね。大学の教授をしているのはご自分で調べたことでしょう?」
チン、とエレベーターの扉が開き。
乗り込めば。
そのあとを時雨も着いてきた。
最上階直通だから、当たり前だけど誰もいない。
「教授は、ほんとは何してる人なの?」
「ただの大学教授ですよ」
「だってさっきの何?あの運転手は?……教授はあたしと、あたしたちと同業者?」
あたし『たち』、ですか。
エレベーターの扉が開けば。
そこはもう我が家の玄関ロビー。
抜けて。
玄関を開ける。
「教授」
「違います」
「え」
「殺し屋さんたちを殺す、殺し屋さんです」
「え」
「どちらかと言えば、敵、ですね」