第7章 傾覆
私は休日を利用して、以前メイク用品を購入したデパートに来ていた。
"明日虎杖君と遊園地デート…
ん?デートなの?!違うよね?!ただ2人で遊園地に行くだけだよね?!"
そう、私は明日、虎杖君と遊園地に行くのだ。
浮かれてしまっているのは百も承知だが、少しでも可愛くいたいという気持ちに駆られ、デパートに来てしまった。
『お客様!お久しぶりです。なんだか雰囲気がガラッと変わっていて、しばらく気付きませんでしたよ!!
…恋でもされたんですか?』
以前メイクをしてくれたお姉さんが笑顔で話し掛けてくれた。
『恋?!私が?!?!
しっしてません……!!』
顔に身体中の血液が集まる。
『新作、たくさんありますよ。
こちらなんてどうですか?デートの時に映えますよ』
お姉さんは可愛らしいピンクのチークと口紅を差し出してくれた。
『かわいい…
これ、両方ください。』
私は迷う事なく購入した。
"遊園地に行くだけなのに、本当私浮かれ過ぎ…"
恋はしていない…。
というより、私には恋がどういうものか分からない。
一緒にいてドキドキする…?
うーん、恵君も虎杖君も五条先生も傑さんも…一緒にいるとドキドキする。
暇があればその人のことばかり考えている…?
うーん、暇があったら鍛錬したいタイプだから考える時間なんてない。
恋とは難しいものだ…
私はそんな事を思いながら、高専に帰る。
みんなと夜ご飯を食べるため食堂へ行くと、1年生のみんなが髪型を絶賛してくれた。
『泉智髪切ったのか?!』
『すげえ似合ってんじゃん!!!』
『私が勧めたのよ!』
『あっありがとう!釘崎さんが勧めてくれたおかげで、少しさっぱりしたの。』
あまり褒められる事がないので、少し照れくさい。
『これで泉智もいい彼氏が出来るといいわね』
『うっうん…』
釘崎さんに言われるも、反応に困り相槌を打つ。
『呪術師に恋人なんかいらねぇだろ』
恵君が横から言う。
『そういう伏黒は好きな人いないのー?』
『いねえよ』
釘崎さんが言うと、恵君は少し顔を赤らめながら言う。
いないんだ…ホッとしたような…少し悲しいような…変な感情に襲われた。
いつか恵君にも彼女が出来るのかな…なんて考えたら寂しくなったので、何も考えないよう首を振って誤魔化した。