第2章 網にかかった蝶①【煉獄杏寿郎】
此花が夜家事を済ませて寛いでいると、水柱邸の入り口の戸が叩かれた。
「、俺だ。開けてくれ」
「師範?」
それは師範である冨岡の声。
今日は柱合会議の後に全員で飲み会だったはず。
そう思いながら急いで戸を開けた。
「…戻った」
「おかえりなさいませ、師範って……あの、背中の方…」
冨岡は一人ではなかった。
背中に人を抱えていたのだ。
顔は見えないが炎のような羽織と黄色の髪。それは…
「炎柱様…ですよね…?」
「あぁ。…酔って潰れた。ここが一番近いから泊めることになった」
「まぁ…。ではすぐに布団を敷きます」
「……頼む。…煉獄、行くぞ」
あぁ、だかうむ…、だかよくわからない返事を聞いては急いで布団を敷きに部屋に戻った。
翌朝。
目覚めた煉獄は痛む頭を抱えて体を起こした。
隊服のまま、羽織だけは綺麗に畳んで枕元においてある。
「(昨日は、柱の飲み会で…俺は飲み過ぎて……よもやその辺りから記憶がないな…)」
その時は、部屋の襖がスッと開いた。
「お目覚めでしょうか?」
「君は……」
鈴の鳴るような声に、凛とした佇まいの少女。
顔はまだあどけなさを残している。
煉獄は目を奪われた。
は煉獄の様子には気づかずに続けた。
「水柱・冨岡義勇の継子の此花と申します。炎柱様は昨晩は酔っておられて、一番近いこの水柱邸にお泊まりになったんです」
「そ、うか…それは不甲斐ない!迷惑をかけた!」
「いえ、お構い無く。どうぞ、薬草茶です。頭と胃がスッキリしますよ」
煉獄の横までくれば、お盆に乗った湯飲みを差し出される。
それを飲み干せば、なるほど頭がすっきりしてきた。
「うむ!いい茶だな!君が淹れたのか?」
「はい。ありがとうございます。朝食ができております。炎柱様は昨夜たくさんお飲みになっているのでお茶漬けとかの方がよろしいですね」
「何から何まですまない!」
「いえ…。支度ができましたら台所の方にいらしてくださいね」
空の湯飲みをもっては退出していった。