第5章 網にかかった蝶②【煉獄杏寿郎】
が煉獄とまぐわってから暫くが過ぎた。
あの後、水柱邸で目覚めたはすべてを忘れる
ことにした。
師である冨岡の帰宅するのを鮭大根を作って待ち、普通に出迎えて。
任務の話を聞いて、いつも通り稽古をつけてもらって。
当たり前の、今まで通りの日常を過ごす。
ただ、避妊薬だけは蝶屋敷から貰い飲んでいた。
訳ありな顔に胡蝶は何も言わなかった。「何かあれば言ってくださいね」とだけ言って多めに薬をくれたのだった。
「カァー!手紙!至急読メ!」
「っ……!」
たまに来るようになった煉獄の鎹鴉。
それは冨岡がいないときを見計らったかのように届く。
その手紙には簡単な挨拶文と日時・場所。
それが何を意味するか……。わかりたくない。
だから、は返すのだ。
【行く理由がごさいませんので辞退いたします】
と。
任務自体は師である冨岡との合同が比較的多く、柱である煉獄も忙しいのであろう。またも気を付けていたので会うこともほとんど無かった。
煉獄も水柱邸にはあまり来なくなっていた。
不思議と断りの返事をしても何も言われなかったので、あれは煉獄にとってもただの気まぐれだったのだろう。
そうして一ヶ月近くが過ぎ、あの出来事は本当に夢だったのではと思うことができるようになってきた。
そう。
だから、油断していたのかもしれない。
とある任務にて。
は森の中で鬼を切っていた。
「水の呼吸 壱ノ型 水面切り」
鬼は断末魔の悲鳴をあげて消えて行く。
これで何体目だろうか。
最後の鬼を切ってため息をつく。
鬼の数は5体くらいと聞いていたのに蓋を開ければ20体近くいた。
想定外すぎる…と刀しまえばの鎹鴉である睡蓮(スイレン)がやってきた。
「休息ー!休息ー!近クノ藤ノ花ノ家デ休メ!」
「はいはい…あ、師範に今日帰るって言っちゃった…。睡蓮、師範に今日は泊まりますって伝えてくれる?」
「承知シタ!」
そして、睡蓮を見送って足を踏み出そうとすれば後ろから声が聞こえた。
「うむ、いい太刀筋だな」