第6章 Episode:06*
「っ……!」
お店が見えてきた。けど、一瞬目を疑う。
でも、確かにあれは。
「野薔薇、ちゃん……?」
スマホを片手に、野薔薇ちゃんが人混みの中からで何かを捜してる。
忙しなく辺りを見回してたりしてたけど、私の姿を認めた途端、ピタリと動きが止まって。
私も、野薔薇ちゃんの姿を見つけた瞬間、ピンと張り詰めていた糸が、少しだけ緩んだような気がした。
「野薔薇、ちゃん……」
ゆっくりとお互いに歩み寄って、徐々に距離を縮めていく。
自然に下がっていく、スマホを持つ手。
一歩一歩足を進めるごとに身体の至るところが悲鳴を上げたけど、私の歩みが止まることはない。
早くて重い動悸と浅い呼吸を繰り返しながら、やっと手を伸ばせば届く位のところまで距離が縮まって。
さっきと同じように、野薔薇ちゃんと真っ正面から対峙する。
けど、今は目を逸らさずに。真っすぐに、野薔薇ちゃんだけ、を。
「……少し、傷ついちゃったんだけど」
「………」
言って、ずっと握り締めていたペンダントを野薔薇ちゃんに差し出す。
それをじっと見つめたまま、野薔薇ちゃんは何も言わない。
……駄目だろうか、やっぱり。言葉が出ない程怒ってる?自分があげたものを、こんな風にされて。
覚悟はしていたものの、いざ直面するとすごくきつい。
心臓を素手で掴まれてるみたいだ。
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