第11章 姫さん、再会する
「解けたよ」
「ありが…あ」
「」
縄が解けたことで、中途半端にはだけていた袷がはらりと落ち、幸いにも帯に引っかかったが上半身はガッツリ晒された。
前にもこんなことあったなと呑気に思う華音に対して、佐助は所謂ラッキースケベ状態に息を忘れた。
サラシはしているし、相手は佐助なので特に華音は抵抗はなかった。
ちなみに佐助と同じセーフティゾーンに入っているのは幸村と家康。理由は理性が存在するから。
「……ごめん」
「いや別に」
二人は同時に後ろを向き、華音は着付けを直し始める。
長く戦国時代にいたせいで、佐助はこの時代の人達と価値観が寄ってきている節がある。
よって、現代にいた頃よりも女の肌が晒されることはなかなか衝撃だった。
ましてや相手は中身はともかく見た目だけは絶世の美貌を持つ少女だ。中身はともかく。
表情筋こそいつも通りだが、心臓はバックバクだった。
「………」
華音は着物の袷を持った時、手元が震えていることに気づいた。
「華音さん」
「…なに?」
「大丈夫?」
「………」
華音を見透かすように言った佐助だが、実際は深い意味はない。
ただ強いて言うなら、華音が一度も“大丈夫”だと言っていないことが気がかりだったのだ。
華音は冗談は言うが嘘は言わない。
自分を守る言葉も言わない。
「!」
佐助の背中に小さな小さな衝撃を感じる。
華音は、佐助の広い背中に頭を預けたのだ。
「…抵抗はした。その間に助けが来てくれたから何もなかった」
佐助はほっと息を吐く。
華音は誰にも迷惑をかけない、心配をかけないように何もないと嘘をつくような可愛い女ではない。
それは佐助も分かっていたが、やはり一抹の心配が拭えなかった。
「……佐助くん」
「うん」
「ありがとう」
「…うん。君が無事で良かった」
華音は犯されることを恐れたのではない。
そんなことは今に始まったことではないから。
華音が恐れたのはその先のこと。
犯された後で、信長達との日常が壊されることを恐れたのだ。