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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第2章 姫さん、出陣する


こんな華奢な女が戦場にいて大丈夫なのか、という皆の心配は開始10分で見事に打ち砕かれた。



「傷を縫合します。痛みますよ」

「ヴッ…!」

「目は瞑らない方が良い。痛覚を少しでも離散させて」

「華音様!こちらは血が止まりません!」

「心の臓より上の位置に置いて、布の上から圧迫させなさい」

「はい!」



傍らで呆然とする秀吉を横目に、華音は負傷者の対応にあたっていた。
素人の動きではなかった。
むしろ、ここに家康が居ないのが惜しいとすら思うぐらいに洗練された動きだった。
袴の上に羽織っていた白い羽織が鮮血に染まる姿でさえ、不謹慎にも美しいと思った。

自分が対応している者だけではなく、他の治療にあたっている者から指示を仰がれても動揺の色は見せない。
これだけのことができる逸材がまだあどけなさが残る少女だなんて、勿体ないと周りの人間は思った。


ある程度の処置が終わり、戦も終盤に差し掛かった時、若い武士が一際大きな声で仲間の名を呼んだ。



「常長!しっかりしろ常長!…ダメだ息してねぇ!!」



その言葉に反応した華音は、周りよりは小柄な体で人混みを掻き分けて声のする方へ駆け寄った。

常長と呼ばれた若い青年の武士は、顔色が青くなった状態で横たわっていた。
即座に華音は常長の胸に耳を寄せ、心音を聞く。



(呼吸音も心音も無い…でもまだ温かいから死んではいない。目立った出血は無し…おそらく打ち所が悪くて衝撃により気を失って、心臓も止まってしまった)



そう判断するや否や、華音は青年の胸の僅か左_心臓の直上に位置するところに手を重ね、胸骨圧迫を始めた。
何十回、何百回と経験した動きには一切の迷いがない。

30回ほどやったところですぐに懐から薄い布を取り出し、青年の口元に被せ、躊躇いなく自分の唇を重ねた。
周りがざわつくこともお構いなしに、めいいっぱいの息を吹き込むこと二回。
唇を離して再び胸骨圧迫を開始する。

それを何回も繰り返した後、青年の指がピクリと動く。



「っがはっ!!」



タイミングよく華音が手を離したところで、青年は息を吹き返した。
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