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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第10章 絡みついた刻の糸は、月の国の禁忌に触れる


殺伐とした空気の中心にいるのは、今までにないほどに苛立ちを全面に出す信長がいた。



「…政宗はどうした?」

「華音捜索の指揮にあたっています。城には代わりに常長が待機しています」



政宗らしい判断だ。
自分の不手際で華音が拐われたのだから、説教を受けている暇があったら探しに行くと言いたいのだろう。

華音が姿を消した原因は、十中八九例の美少年の仕業である。
政宗の御殿の女中達の証言によると、最近入った新人の中には黒髪で若くて綺麗な者がいて、今は一切姿が見えないとのこと。
判断の早い彼らはすぐに目星をつけた。



「童一人の仕業とも限らん。政宗と合流し全軍で捜索にあたれ!」

「「「はっ!!」」」



華音が拐われてすぐに軍議を開き、捜索を命じることに異議を唱える者は一人もいなかった。
その“意味”を言葉にするのは野暮なのか、誰も口には出さなかった。









「信長様!秀吉様!例の少年らしき者を城門にて捕縛しました!」

「「!」」



捜索を始めてしばらくした時、三成が二人のいる部屋に飛び込んできた。
三成からの報告に二人は目を見開く。



「城門で…?なんでた!?」

「それが…信長様に会わせろと言っているのです」

「…はぁ!?」



思いもしなかった展開に秀吉は声をあげる。
今の今まで探していた少年が、こちらが見つかる前に向こうから来たのだから。



「よい。通せ」

「信長様!」

「ここは城内だ。もしものこともありえん」



幼い容姿で油断させて、なんて場合も無いことはない。
それも考えているから信長に隙はないのだ。



常長に連れられて来た少年は、華音の言っていた通り本当に美しい顔立ちをしていた。
そして、心なしか誰かに似ていた。
不思議なのは、黒い髪が雨をかぶったように濡れていること。
秀吉と呼ばれて戻った政宗はぽつりと呟いた。



「「…美少年」」

「…確かに俺こんな顔だけど、初対面でこんなに言われるとは」



初めて少年は信長達の前で声を発した。
三成よりも高いそれは、本当に少年なのだと分かる。



「童、俺に何の用だ。華音をどこへやった」

「…俺が知りたい」

「は?」



少年は、形の良い唇を噛んで悔しそうに言った。
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