第29章 姫さんと復讐鬼と悪の華
元就にはああ言ったが、実際華音が“嫌がらせ”をできるかは五分五分だ。
それに加えて、時間が経てば経つほど、将軍側に手を貸す者が現れるかもしれない。
決して将軍を見込んでいるわけではなく、織田軍の力を削る目的ならば将軍側につくのは悪手ではないからだ。
現に元就が一時とはいえ手を貸したくらいだ。
今求められているのは、一刻も早く将軍の居場所を特定すること。
目星はつけているものの、万が一外れることもある。
だが、将軍の居場所を特定することと、華音の“嫌がらせ”を達成する方法が一つだけある。
(……鬼さん、こちら。手の鳴る方へ)
まだ明るい時間帯。
光秀達は本陣で武器と人員の最終チェック。
ここは本陣から少し離れた、若干“特定した場所”寄りの道。
もちろん華音にも護衛は付いている。
付いてはいるが、たった今気配が消えた。
「見つけたぞ、光秀の弱み」
「……っ」
瞬く間に男達に囲まれたと思えば首にちくりと激痛が走り、布で口を塞がれ、華音の意識は沈んだ。