第28章 姫さんと狐の交渉
「とりあえず今のところは順調ということでいいですよね」
「おい、いい感じに締めようとすんな。さっき全員同じ宿の部屋にしようとしてたこと忘れてねーからな」
「あの部屋割りだったら敵襲があっても無傷の自信があった」
「俺たちは盾替わりか」
祭り会場から戻り、あらかじめ押さえていた宿にて彼らは休息をとる。
丸腰にならないに越したことはないので、華音、幸村・佐助、光秀・義元の順で湯あみに行って、今は光秀たちが入っている。
「今更だけどあの二人が裸の付き合いしてるって想像つかない」
「大丈夫でしょ。あれでも兄弟弟子だ」
「……あ」
忘れかけていたが、光秀と義元の大きな共通点は、師範が同じということ。
あまり想像したくはないが、気まずくなったらその話題にすればいい。
「あと華音、光秀と元就のことは大丈夫なのかよ」
「そうだ。あの二人は知り合いだったみたいだけど」
「将来(殺しあうこと)を誓い合った仲だそうです」
「なんて??」
華音が言葉足らずなのは今に始まったことではないが、それにしても色々ひどい。
一瞬元就と光秀のよからぬ関係を想像してしまった佐助は決して悪くない。
「……そういや、信長の寵姫だか何だか囁かれてたのはどうなったんだよ」
「懐かしいですね」
その噂はもはや今更すぎて、安土城内の者達の間では風化している。
「そもそも私信長様の好みじゃないですよ」
「なんでお前が信長の好み知ってんだ」
まさか見たのか、とも思ったがそうではない。
いつかの時にも言ったが、華音は光秀以外の男の趣味には微塵も興味がない。
信長が華音に夜伽(という名の碁の相手)のために呼ぶ以外の、彼が召す相手は男か女かもわからないし、わからないままでいい。
わからないが、少なくとも自分は違うだろうと思っているのだ。
「君が思う信長公の好みって?」
「後腐れがない女」
「それは好みというより条件では」