第1章 姫さん、起床する
ぱち。
「…やっぱり夢オチではないか」
ぐっすり眠った体で迎えた朝は心地良い。
本能寺で織田信長を助けたり、伊達政宗の馬に長時間乗ったりでかなり疲労が溜まっていたから余計に。
軽く乱れた着物を整え、羽織を着て部屋を出る。
昨日石田三成から案内された時に覚えた井戸の方へ向かい、水を汲み上げて顔を洗う。
初春の朝は少しだけ肌寒いが、眠っていた体を起こすには丁度いい。
「早起きだな、小娘」
不意に後ろから声をかけられ、顔を拭いていた手拭いを下げて振り返る。
その時ちょうど朝日が顔を出し、私達を照らした。
私の髪と対称的な色の髪が、朝日に反射して光っていた。
特別な感情などどこにもなく、ただ、ああこれが美しいというものなんだと思った。
「おはようございます、光秀どの」