第26章 姫さんと狐の仲間探し
「師範が来られていた?」
「来ていたというより、見ていたのほうが正しいですね。将軍の死にざまは見れなかったものの、なかなか面白いものが見れた、とおっしゃっていました」
「ぶれないな、あのお方は」
「貴方もたいがいですよ」
場所は変わってある食事処にて。
二人はこれからのことについて話していた。
華音がどうやって陽臣と連絡を取ったのかは謎であるが、陽臣と付き合いの長かった光秀は、それを聞いても無駄だとわかっている。
「それで、光秀どの。勝算はあると仰っていましたが、どうするのですか。闇討ちですか」
「姫の言う言葉とは思えないな」
「目には目を、闇討ちには闇討ちをというでしょう」
「お前の偶に出る謎のことわざは何なんだ」
ちなみに、前例には『触らぬ天女に祟り無し』というのがある。
どちらかというとそれは、ことわざではなく実体験である。
「それとも、協力者を集めて確実に、とか」
「まあ、言ってしまえばそうだな」
「あてがあるのですか」
「明日のお楽しみだ」
「それほんとに楽しいですか」
仮にもこれから一つの時代を終わらせに行くというのに、この二人には緊張感がない。
失敗するとは微塵も思っていないことへの自信か、それともすでに覚悟を決めているのか。
おそらく両方だろう。
当たり障りのない会話をして、頼んだ料理が所狭しと並べられた。
選んだのは華音で、今の光秀にちょうどいい量と栄養バランスを考えた食事である。
「ちゃんと食べてくださいね」
「お前、俺を肥えさせる気か」
「たいした量じゃないでしょう。私も食べますし」
華音は年頃の娘と比べて、食べる量が多い。
理由は簡単で、普通の娘たちより動いているから。
毎日消費するエネルギーに相応するカロリーが必要なのだ。
ちなみにカロリーが上回った場合、それらは身長と胸と下肢につぎ込まれた。
食事を終え、九兵衛と合流したところで、彼らのもとに来客が現れた。
「佐助くん、幸村どの……?どうしてここに」