第4章 姫さん、城下に行く
先の戦の功績やら何やらで信長様からお小遣い(多過ぎて怖くなったので半分返した)を貰い、城下を歩く許可が出た。
常長どのが自分も付き添うと言ったのを丁重にお断り申し上げて、漸く城を出た。
監視は視界に入らないから良いとして、付き添いは駄目だ。
常長どのが駄目なのではなく、誰が相手でも下手くそな気遣いをしてしまうかもしれないから。
1番揉めたのは秀吉どのだった。
「城下に行く時まで袴じゃなくても…」
「私は私の似合うものを着ます」
あの時の秀吉どのの、否定も肯定も出来ない顔はなかなか面白かった。
小袖は動きづらい。そして走りづらい。
本能寺の夜に秀吉どのと政宗どのに捕まってしまったのも、半分はそれが原因だった。
閑話休題。
城下に入ってすぐの店で信長様から頼まれていた金平糖と買う。
…あの顔で金平糖が好きなのかと失礼なことを思ったが、頭の良い人間は脳に糖分も必要かと判断し、それ以上何も考えないことにした。
金平糖はそこそこいい値段だったが、まだ小遣いが残っている。
この時代の金銭はよく分からないが、おそらく残っているお金で良い茶菓子の一つや二つは買えるだろう。
そう思って美味しそうな茶菓子がありそうな店を探していると、後ろから声をかけられた。
「華音さん」
「!佐助くん」
振り返ると、そこには以前会った時の白衣や忍者の服ではなく、普通の町人の格好をした現代人仲間がいた。
彼の名は猿飛佐助。
私が戦国時代にタイムスリップする4年も前に来ており、その時助けた人に忍者として仕えているらしい。
私が言えたことではないが、適応力が高い。
「久しぶり、元気だった?」
「元気だけど佐助くん、出来れば後ろから話しかけるのはやめてほしい。敵かと思った」
「分かった」
「侍かお前は」
「ん?」
佐助くんのいる店の奥から出てきたのは、佐助くん同様に本能寺の夜に会った青年。
あの夜は暗かったので定かではないが、声はまんまなので間違いない。
「華音さん、彼は真田幸村。俺のズッ友」
「改めましてどうも、真田幸村どの。華音と申します」
「おー」
ぶっきらぼうな返事だが、無愛想なだけで無関心なわけではないのだろう。
今朝、朝食にて大量の唐辛子をかけて食べるどこかの武将を思い出した。