第17章 姫さんと狐の道中
閑話休題
【暇つぶし】
その日は本当に偶々だった。
偶々、秀吉、光秀、三成、政宗、家康、華音は暇を持て余していた。
そして偶々、華音は南蛮からの交易品の中に“カルタ”を見つけ、信長に許可を得て借りて懐に忍ばせていた。
「___この菱形のがダイヤ、葉っぱが三つのものがクラブ、尻みたいなのがハート、尻に矢が刺さったようなのがスペードです」
「尻とか言うな」
「痛そう」
分かり易いがぞんざいな説明を受け、飲み込みの早い彼らはトランプの種類を理解した。
ジョーカーは無いが、神経衰弱もジジ抜きもできる。
なるべく全員が楽しめそうな遊びを考え、賭け事をすることになった。
華音がカードをきっている間に、彼らは何を賭けるかと話し合う。
「ただの遊びだから金以外がいいな」
「勝った奴が秀吉の弱みを知れる、とかどうだ」
「本人の前で言うことかそれ」
「私は勝ったら皆さんと一緒にお茶しに行きたいです」
「俺は行かない」
言いたい放題だなあ、と思いながら華音は最後にトンと札を揃えた。
そして全員にそれぞれバラバラに五枚ずつ配り、残った札を真ん中に置く。
彼らは自分達の持ち札を手に取った。
「華音は何がいいと思う?」
「……じゃあ負けた人は」
華音は持ち札を手の中で揃えると、顔を上げて五人の武将を見た。
そして爆弾を投下した。
「信長様の可愛いと思うところを信長様に話す」
なんて事思いつきやがる、という視線を一身に浴びたことは一生の思い出となった。
のちに華音は、「戦以外であんなに真剣な武将達は初めて見た」と語った。