第9章 生命と選択
「隊長、これで討伐完了っす」
「そうか。被害状況は?」
「三名ほど軽い怪我を負いましたが、死亡者および重傷者はいません」
「―…上々だな。よし、帰還する」
「はい。全員、六番隊舎へ帰るぞー!」
大声をあげて、恋次は周囲にいる隊士達に撤退を指示する。
それを見て、白哉はくるりと背を向けた。
ようやく帰れる。
白哉の意識は、自然と美穂子へと切り替わる。
数日かかる討伐は、美穂子と出会ってから初めてのことだ。
そのため、今回の討伐で白哉は美穂子の存在の大きさを痛感していた。
美穂子と恋人関係となって一年が過ぎ去ろうとしている。
最初の頃もかなり愛しいと思っていたが、それは一年経っても絶えることがない。
逆に、もっと笑顔を見たくて、もっと話しかけてほしくてたまらなくなる。
白哉は、空を見上げた。
そこには―…雲一つない空が広がっている。
今夜は満月。
きっといい月夜となるだろう。
「―…今夜、にするか」
出逢った時と同じ満月の夜に、あの泉で。
美穂子という女神を―…永遠に手に入れるために。
もしかしたら有限の時かもしれない。
それでも―…自分は確かに、彼女と共に生きたいのだ。
白哉はそう決意すると、部下とひきつれて六番隊舎へと向かった。