第4章 瀞霊廷の生活
白哉の言葉に、恋次はホッとしたように自席に戻った。
眉を顰めて十番隊隊長の書面を見る白哉に、正直ひやひやしていた。
美穂子は挨拶などの基本的なことはきちんとできるし、書類整理と言う仕事も完ぺきにこなす。
そういうところに厳しい隊長が、美穂子の日常態度には一定の理解を示している。
また高圧的な態度などは一切なく、むしろフレンドリーだと言ってもいいくらい明るい彼女。
見目は正直言って十人並みというか、ごく普通ではあるが凛とした大人の女性という印象を受ける容姿は、隊士からみても好感度が高かった。
そのおかげで、六番隊でも美穂子はよく打ち解けていた。
最近では報告書を書くのが苦手な席官が、美穂子に教えを乞う姿もちらほら見かけるほどだ。
自分の目から見ても、自隊の隊長は美穂子を気にいっていると思う。
昼も時間が合えば声をかけているし、行き帰りは一緒に帰る。
いくら監視の任とはいえ、白哉の美穂子に対する視線は少し穏やかな気がするのは自分だけだろうか。
そのため、今回の話が来たときは冷や汗が出た。
能力をかってのお誘いとはわかっているが、それでも―…美穂子が他の隊を手伝うのを良しとするかどうか。
恋次にはわからなかったのだ。
「―…恋次。少し書庫へ行く」
「あ、はい!」
ボーっとしながら考えていると、白哉は手紙を懐に入れて部屋を出ていく。
それを見届けて、恋次は首を振って筆を動かし始めた。
書庫には今、美穂子が書類を探しているはずだ。
恋次は小さくため息をついて、何もおきないことを祈った。