第4章 瀞霊廷の生活
「隊長。ちょっとご相談があるんすけど」
「なんだ」
朝、美穂子と共に六番隊へ出勤すると整理すべき書類の束が白哉のいる執務室になかった。
現在、美穂子は隣の書庫に持って行かれてしまった書類を探しに行っていた。
それを見計らって、恋次は白哉に声をかけたのだ。
「美穂子には給金、支払ってたりするんすか?」
「突然なんだ」
「いえ、その。かなり―…頑張ってくれてますし。少し給金出してやってもいいんじゃねぇかなぁ…と」
「―…お前がそんなことを気にするなど、珍しい」
白哉は少し驚いた。
恋次と言う男は、決して無能な男ではない。
けれど、事務処理だとか支払い関係だとかはもっぱら苦手意識があるらしく、やらなければならない分だけしかやらない。
おかげで隊長である白哉が書類を多くこなさなければならないのだが。
そんな恋次が人の給金処理について聞いてくるのだから意外だった。
「あー…実はっすね…」
恋次は少し言い難そうに口を開いて、静かに、一通の手紙を白哉に渡した。
「その、十番隊から書類整理を美穂子に手伝ってほしいという依頼が…来たんすよ」
そこには、十番隊の隊長を務める日番谷冬獅郎の印と共に、十番隊の書類整理に美穂子の力を幾何か貸してほしいという内容だった。
「―一応、乱菊さんからは六番隊の手が空いた時でいいと。それから働いてもらった分は給金をきちんと出すということらしいです」
「……総隊長の許可が必要だと、言え」
「それが…その許可も取ってあるって、言われてしまっていて…」
「……」
なるほど、と白哉はため息をついた。
十番隊が美穂子の能力に対して、給金を出すのであれば六番隊で出さないでいいのかと恋次は思ったのだろう。
白哉は眉を顰めた。
確かに美穂子の処理能力は給金を支払うに相応しい。
しかし、彼女はそれを望んでいるのか。
「―…検討しよう」
「! は、はい」