第2章 2
イカの体内には精莢(せいきょう)と呼ばれる器官がある。細長い袋状のもので、中にはイカの精子がつまっている。イカのオスが精莢を勢いよく射出してメスに渡し、そして受精へと至る。
しかしこの射出の勢いたるや凄まじく、死後何時間も経っているイカであっても、自動的に飛び出た精莢が、人間の体を傷つけることがあるという。
新鮮なイカの刺し身を食べたが、適切に取り除かれなかった精莢が口内に刺さり手術が必要に…などという話もあるのだ。
とはいえこの巨大イカは、その生殖兵器を取り出そうとはしなかった。ただドロドロに濡れそぼった有羽のパンツを丁寧に脱がせ、今まで使ってこなかった触腕を、有羽の秘壺にねじ込ませた。
「あっ……、う」
有羽は目を細め、喉から声を絞り出した。己の体内に、異物が侵入してくる気配がわかったのだろう。
イカの触腕は、足とは異なる形状をしている。先の方がやや膨らんだ紡錘型で、吸盤も先端に集中している。イカはその触腕を巧みにくねらせ、有羽の奥へ奥へと進ませていった。
「んああっ…ひっ、あ…。はいっ、て…くゆ…んんうっ」
「有羽、すごくキツい。もうちょっと力抜いてくれよ」
「あひゃ、む、り…できな、ひうっ」
触腕が動くたびに、吸盤が内部を刺激する。有羽は腰を跳ね上がらせて快感に悶え続けた。
「んっ…。もう少しだからな…。有羽、ハァ…かわいいな」
ほうっ、とイカは息をついた。どうやら奥までいれ終えたらしい。
もちろん触腕の長さにはまだまだ余裕がある。イカの触腕は足よりも長く、この巨大イカのそれともなれば、数mに及ぶのだ。その気になれば有羽の腹どころか喉まで突き抜けることも可能なのだが、イカはそこまで求めていないようだった。
「はーっ…はーっ…。入っ、た…?」
「ああ、奥まで入った」
「ん、う…」
有羽はゴクリとツバを飲み、唇を噛んだ。これから襲ってくる快楽地獄を知っているからだ。ドッと汗が流れた。辺りを這うイカの足をギュウと握る。心臓がドクドクとうるさい。これは恐怖だろうか。毎度毎度、自分が壊れてしまうのではと思ってしまう。しかしそれよりも期待が勝る。天に昇るような、脳が弾けるようなあの快感を、与えてくれるのは目の前のイカだけなのだ。
「来て…♡」