第9章 そして…
それから
長い年月が経った
都内の静かな住宅地
鉄製の門をくぐり
広い庭を抜けると
木々に囲まれた大きな屋敷がある
入り口の正面にある大きな階段を上がり
右側へ2つ目のドアを開けると
広い部屋の奥
大きなベッドの上にアンナは眠っていた
LAの病院で植物状態と診断されたアンナを日本へと連れて来るために
あらゆる手を尽くした
現地の事務所との契約があり
一筋縄ではいかなかったが
僕は絶対に諦めなかった
有能な弁護士を雇い
最終的には双方が納得できる方法で示談に運ぶことができた
ロングアイランドの屋敷の管理を信頼できる人間に任せた僕は
特別なチャーター機にアンナと乗り込んだ
長いフライトを経て
日本の地へ着いた僕達を出迎えてくれたのは
夏生・健人を始めとする仲間達だった
彼らは
アンナをこのような運命へと導いてしまった事に責任を感じ
ずっと自分を責め続けていた僕の考えを否定し
立ち直る為の支えになってくれていた
日本に到着した後
彼女はすぐに手配された病院へ運ばれ
その分野に秀でた医師の診断の下
経過を観察された
しかし
僕らの願いも虚しく
現在の医学の全てを注いでも
アンナの意識を回復させる事はできなかった
容態の落ち着いていた彼女の身体は屋敷へと運ばれ
最新のモニターを使いながら
24時間体制で厳重に管理される事となった